監査記事2007年2月- 2日
どのようにして価格を決めるか?

© Eliyahu M. Goldratt, 2007

私の第2の訪問先は、ガラスのように見えるプラスチックシート生産会社でした。この会社は、地域の消費量の60%を生産しています。

この会社をバイアブル・ビジョンのプログラムに受け入れるとは、私もずいぶんと冒険心があったものだと思います。というのは、十分に警報を鳴らすに足るものだからです。かんたんな業務内容をしっただけでも2つの警報が大音量で鳴ることでしょう。

1つめの警報は、この会社が既に占有している大きな市場シェアのせいです。仮にこの会社が決定的な競争力の構築に成功したとしても、その競争力を利益に変えていくに足るだけの十分な市場に容易にアクセスできないからです。

もう一つの警報は、この会社の製品がプラスチックシートであるということです。プラスチックシートの製造は、マネージメントが最も難しい環境の一つとして知られています。プラスチックシートの製造にまつわる特殊な困難をわかっていただくために、「チェンジ・ザ・ルール」の本の中からの引用をみていただきましょう。

「私が見てきた中で、その他にさらに扱うのが難しい複雑性の種類があります。たとえば、特殊樹脂を扱う企業を考えてみましょう。ある作業センターで色を加える場合を考えてみます。ある形状の黒色パーツをつくっているとき、そこから別の黒色パーツの製造に移行するには5分もあれば大丈夫でしょう。器具の調整を適当に実行すれば済む話です。けれど、黒色のパーツの製造から白色のパーツの製造に移行するとしたら、5時間はかかるかもしれません。機械をほとんど完全に分解し、清掃しなければならないわけです。さもなくば、灰色のパーツができてしまうでしょう。これを『依存性セットアップ時間』といいます。

もちろん、まず同色のパーツをすべて製造し終えてから、次の色のパーツ製造へ移行するのが好ましいとされます。だから問題はないわけです。この場合、問題が複雑になるのは、これらのパーツをさらに加工する作業センターにも『依存性セットアップ時間』が存在することです。運の悪いことに、こちらの依存性は色に対してではありません。例えば粒度や幅といった別の特性になってくるわけです。ここで私たちが直面するのは、2つの作業センターが、それぞれ別々の『好ましい順番』をもっていることです。さて、もしも最初の作業センターの好ましい順番に従ってスケジュールを立てたとしたら、2番目の作業センターでは始終セットアップを行わねばならず、ここが大きなボトルネックになってしまいます。けれど2番目の作業センターの都合でスケジュールを立てたら、最初のものがボトルネックになります。わかりますね」

こういった環境下では、在庫は管理不能になり、納期厳守率は悪くなり、月の生産量さえ予測不能になります。もちろん、製造SKU の種類が多くなればなるほど、問題は大きくなります。この会社では4千近い異なったSKU を製造しているのです。

工程ごとの依存性セットアップ時間が組み合わされる結果としての不確実性が、どの程度か感覚を掴んでいただくために、この会社の週あたりの全生産量のグラフをご覧頂きましょう。

グラフ:週あたりの生産量

改善のためには、「ドラム・バッファ・ロープ」の深い理解とともに、在庫に合わせた生産をどのように行うのかの理解と、優れた技術能力が必要になります。我々のチームにはその力がありました。このグラフの続きに、それがはっきりあらわれています(全体の生産サイクルは3週間かかりますから、7週あればはっきりとトレンドはわかります)。

グラフ:週あたりの生産量(改善後)

全生産量が新記録に達したばかりでなく、それ以上に重要なことに、変動幅がほとんど消滅しました。製品の大多数については(それでも12のラインのうち2つに関しては防御能力がまだ十分ではないのですが)、この会社では、いまや4週間のリードタイムが確約できるようになり、99%以上納期を守ることができるようになりました。さらに加えて、全生産量の30%までに関しては、2週間(場合によっては1週間)の納期を約束できるようになり、それでいて、ほとんど約束をすべて満たすようになりました。同様のプラスチックシート製品ラインアップを製造する世界中の同業他社のいずれと比較しても、当社が最高であるというのは、いまや私にとって疑いのないことになりました。

リードタイムが短いことも納期厳守率が信頼できることも、顧客にとって重要なことですから、当社が決定的な競争力を築き上げたことは明らかです。問題は、それを十分に活用するだけの市場が十分に残されていないことです。ただし、あえて基本に立ち返り、どのようにして価格を決めるのかを問い直してみない限りは。


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