数週間前のことですが、私はあるアパレル有名ブランド企業の部課長クラスの人々と午前中いっぱい一緒にすごしました。この会社の名前を仮にビッグブランド社としましょう。私がこのメモを書いた理由は、どのくらい会社を改善できるかということについて、限界があるとみなさんが思っているかもしれないと懸念をしているからです。小さな会社、あるいは中規模な会社だけは、飛躍的成長が可能だと思い込んでいるかもしれません。しかし、極めて大きな企業、たとえば、数千億ドルを超えるような大企業において、2-3年の間にどれだけの改善の可能性があるかということについて、例をとり、彼らの純利益を、現在の年間売上金額と同等額に成長させることが、現実の可能性として、可能であることを議論したいと思います。
ビッグブランド社は、業界トップクラスの企業です。ビッグブランド社の名前を聞いたことがない人など、ほとんどいないでしょうし、財務パフォーマンスを精査すればその評判も根拠のないものではないことがわかるでしょう。総売上は何千億ドル規模に上りますし、純益も年10%程度になります。売り上げに対して約10%の純益をあげるというのは、アパレル業界にあっては非常に素晴らしいことなのです。
財務担当の部長が口を開くまで、多くの議論がその部屋で続きました。彼の返事は5年間で純益を倍にして年間10 億ドルに増加させましょうというものでした。実際これは野心的なターゲットですし、出席者もみな簡単ではないとわかっています。にもかかわらず、会社として、やると意気込みを固めているのです。議論は終わりました。ここで、私は、この会社がどのようにしてこの野心的なターゲットを達成しようとしているのかを探り始めるのではなく、むしろ出席者に「5 年で年間40 億の純益に達することができると思いますか」と尋ねてみることにしました。驚くにあたらないことですが、誰もがこの数字を完全に非現実的なものと考えました。
さて、本当にそうなのでしょうか。
純益の増加は、事業の拡大、または、オペレーションの改善によって可能となります。大企業にとって、2-3 年で5 倍に事業の拡大で行うことは非常に困難なことであることは私も認めます。しかし、既存のオペレーションを改善することによって純益を拡大することについてはどうでしょうか。
ほとんどの企業がそうであるように、彼らも極めて数多くの改善活動が行なっています。そして、ほとんどの企業と同じように、彼らのほとんどの改善の努力は、コストを節約するということに向けられています。たとえば、輸送コストの削減、より安い、しかし、容認できる業者などを探すということです。もしも、1 年に数百万ドルの節約ができたとしたら、良い活動だとみなされますし、さらに、それが数千万ドルの節約ができたとしたら、それは、極めて良い活動とみなされます。彼らが、純利益を数千億ドルに成長させることが可能であると考えても不思議ではありません。
本当の改善の可能性を明らかにするために、店頭の品切れの現象について検討してみることにし、次の質問をしてみました。
「各店舗は、商品のリスト、つまりどれだけSKU(在庫管理単位)を持つかということを決めていると思います。平均してどのくらいの割合のSKU が各店舗で品切れになっていますか?」
多くのブランドの商売と同様に、マネジメントは、品切れが頻繁に起こっているのはわかっていますが、どのくらいの大きな影響があるかということについては、理解していていません。彼らの回答は、30%近くであるということでした。
「店頭において商品が品切れになっているために、どのくらいの売上が損なわれていますか?」と質問しました。
「30%以下だと思います。なぜなら、多くの場合、お客様は目当ての商品が見つからない場合、それに代わる商品を買ってくれるからです。」というのが返事でした。
私はこれに同意しませんでした。確かに顧客によっては別の商品を買ってくれることは認めましょう。けれど、在庫切れになったSKU のパーセンテージより、売上損失が遙かに大きいと信ずべき根拠となる要因が別にあるのです。
「店舗において、典型的な品切れになっている商品はなんでしょうか?」と質問しました。
品切れになっている商品は、需要が当初の予想に比較して、はるかに大きい商品であると彼らは何の問題なく返事をしました。
「店頭で品切れをおこしている商品の需要は、その他ほとんどの商品に比較して、はるかに需要が大きいと考えてよいと思いますか?」と私は、質問しました。
店舗における店頭在庫の多くが、比較的に売れ行きの悪い商品であるという事実を考慮すると、彼らはこれに同意せざるを得ませんでした。
次は以下のように質問しました。「機会損失による影響は、店頭商品の品切れの割合に比較して、はるかに大きいものであると考えた方がよいのではないでしょうか?」多くの人たちが、機会損失ということであれば、50%にも達するかもしれないと憶測している時、私は、さらに付け加えました。「すると、現在の売上金額をベースとして考えると、品切れによって失われる金額は、今、現実に販売している金額に近いのではないでしょうか?」
これには、彼らも少しショックをうけたようです。そのことを証明するため、私は彼らの注意を、中央倉庫に向けるようにしました。ビッグブランド社の中央倉庫で品切れになっている商品は、店舗が在庫をもつべき商品リストの中から削除されます。このため、中央倉庫における品切れの追加の影響についても調べることは大切です。
多くのファッション製品同様、ビッグブランド社の商品でも市場内商品寿命は6 ヶ月
です。事業のベースになっているのは夏物と冬物で、そのため6 ヶ月ごとに新作コレクションを発表します。6 ヶ月分、すなわち各シーズン分全部を一つのバッチで発注、製造、仕入をするわけです。そこで私の質問は、夏物でも冬物でもシーズンが始まって3 週間後に中央倉庫に入ってみたとして、早くも倉庫からなくなっているSKU がいくらかでもあるだろうかというものでした。
出席者の回答は、「もちろんです」。
「ではなぜ、これらの品物、シーズン開始時には6 ヶ月分と見込まれるほどたっぷり蓄えられてあったはずの商品が、3 週間後に中央倉庫から早くもなくなっているというようなことが起こり得るのでしょう?」
その答えは、こういった商品は売れ筋の人気商品で、予想以上に需要が高いものだったから、というものでした。
「これら商品から、どれだけの売上が失われたでしょう?」ロジックのチェーンをたどります。もしも、あるアイテムが1 ヶ月で売り尽くされ、リストから外されてしまったら、次の5 ヶ月の間、彼らはその分の売上を失うことになります。この商品に関する売上損失は、実際の売上の5 倍になることになります。(通常、ある商品に対する需要は、シーズン初めにピークにくるということはなく、むしろ、その商品に対しての市場重要を反映したものであると彼らは合意しました)。
「3 週間後以降では、どれだけのアイテムがリストか削除されているでしょう? 6週間後以降なら? 3 ヶ月後以降なら?」議論したように、中央倉庫からなくなった商品については、店頭商品リストから削除されます。このため、我々は、店頭の品切れによる影響に加えて、倉庫の在庫切れのインパクトも加えなければなりません。ここで議論している現象は、おそらく、いま実現している売上の総額と同額か、それよりも大きいものになっているということに彼らは同意しました。
今度は、彼らに、数字による影響について、考えてみるようにお願いしました。品切れによるインパクトがどのくらい大きなものであるかについて、私は次のように質問しました。「もしも、すべての品切れがなくなったら、どのくらい純利益が上がることが期待できますか?」
いくつかの議論の後、彼らは、奇跡が起こり、店舗において品切れがなくなったとしたら、ビッグブランド社は、売上増加は、売上増に対応するためのインフラをわずかに増加させる必要があるが、業務費用をそれほど増加させることはないだろうという結論に達しました。コストが上がるのは、協力業者に対して支払う追加の商品に対する仕入れのコスト分だけです。しかし彼らは、販売価格の五分の一の価格で商品を仕入れているので、
品切れを解消したことによる売り上げの増加によってつくられる80%のお金は、直接、業績としてもたらされることになります。
品切れを解消すると、純益に対する影響は、おそらく年間40 億ドルを超えるものであるということが、避けられない明らかな結論となったときには、部屋の中は静まりかえました。
なぜ誰もそれをきちんと認識しなかったのでしょう。
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